市川市動植物園のサル山にミームコインの着ぐるみ男が侵入し逮捕される 「炎上商法」と批判の声

2026年5月17日、千葉県の市川市動植物園で、子ザル「パンチくん」が暮らすサル山に着ぐるみ姿の男が侵入し、警察が出動する騒動が起きました。海外のミームコイン関連アカウントが関与をうかがわせる声明を投稿したこともあり、迷惑行為をめぐる批判が広がっています。

子ザル「パンチくん」人気で来園者が急増

市川市動植物園は、ニホンザルの子ザル「パンチくん」によってこのところ大きな注目を集めている動物園です。

パンチくんくんは生後半年ほどのニホンザルで、母ザルが育児をしなかったため飼育員による人工保育で育てられました。本来であれば生まれてすぐに母ザルへしがみついて過ごす時期に、母のいないパンチくんはオランウータンのぬいぐるみを母親代わりに抱えており、その姿がSNSを通じて国内外へ拡散。パンチくんをひと目見ようと来園者が殺到し、土日には入園待ちの列ができるほどの盛況が続いていました。

来園者の急増を受け、同園はかねてから観覧マナーについて注意を呼びかけていました。4月29日には公式Xで、サル山を観察する飼育員の業務に支障が出るとして、長時間の会話や撮影を控えるよう要請。さらに5月2日には、条例によりSNSの広告収入なども含む「業」としての撮影には許可が必要であるとして、改めて注意喚起を行っていました。

サル山に着ぐるみ姿の男が侵入、警察が出動

市川市動植物園の発表によると、17日午前10時50分ごろ、サル山内に侵入者がありました。

SNS上では、来園者が撮影した複数の動画が拡散しています。

それらの映像によれば、侵入した男はサングラスを掛けた黄色い顔の絵文字を模した大きな着ぐるみを頭からかぶり、青いスーツに赤いネクタイという出で立ちでした。男はサル山の手すりを乗り越え、観覧エリアより数メートル低くなっているサル山の内側へ、壁づたいに飛び降りました。

落下の衝撃で着ぐるみの頭や手のパーツが外れ、その下から短髪の外国人風の男性が現れると、来園者からはどよめきが上がったといいます。

男は落ち着いた様子で外れたパーツを拾い上げて装着し、サル山に座り込みました。サルたちは困惑したように侵入者を見つめ、怯えるようにサル山の上へと逃げていったと伝えられています。

ほどなくして駆けつけた職員が男を連れ出し、男は抵抗することなく従ったとされています。

パンチくん関連の動画を多数投稿している「動物ランド」(登録者数7万人)が公開した動画では、男が柵を乗り越えて侵入する様子や、園内に複数の警察官が到着している様子が記録されています。

YouTube動画 YouTube動画

同園は当日、公式Xで「本日10:50頃、サル山内に侵入者がありました。当該侵入者を含む2名を、警察官に引き渡しましたのでお知らせします」と報告。動物や設備の安全確認を行ったうえで、一部観覧エリアを閉鎖して警備体制を強化し、当日は引き続き16時30分まで開園すると案内しました。

一方、ゲート前広場で予定されていたキャラクター「市川梨丸」のグリーティングは中止となりました。複数の報道によれば、威力業務妨害の疑いで緊急逮捕されたのは、サル山に侵入した男と、その様子を撮影していたとみられる男の2人で、いずれも自称アメリカ国籍の20代。それぞれ大学生、歌手を自称しているとされています。

「Memecoin」を名乗るアカウントが声明、100万円の寄付を主張

拡散した動画に映る着ぐるみのデザインから、「Memecoin」を名乗るアカウントとの関連が指摘されています。

同アカウントは侵入者と同じ黄色い絵文字のデザインをプロフィール画像に設定しており、17日には「ミームコイン東京上陸」として、同じ着ぐるみ姿で渋谷の街を歩く動画を公開していました。

「Memecoin」は、サングラスをかけたコイン型のキャラクターをマスコットに据えた暗号資産系のプロジェクトです。同アカウントの投稿には、このマスコットの着ぐるみを身につけた人物が各地の街頭や名所に現れ、人目を引くパフォーマンスを撮影した動画が世界各地のロケーションで数多く投稿されています。

報道では、侵入した男らはこの「Memecoin」を名乗るインフルエンサー、あるいはそれに感化されたコミュニティーの一員である可能性があるとされています。

同アカウントは騒動後、英語で声明を投稿しました。声明では、コミュニティーのメンバーの1人が同園のパンチくんがいる区画に、マスコットコスチュームを身にまとってテディベアを持って入ったパフォーマンスについて「承知している」と説明。支持者に向けて「君たちは他とは違う」と謝意を示す一方、「現地の法律を遵守し、自分自身や他者、そして動物を危険にさらさないように」と呼びかけ、「ワイルドなエネルギーは文化の一部だが、安全が常に最優先だ」と続けました。

そのうえで、複数の角度から映像を確認した結果としてサルへの加害はなかったと主張し、「この行為の唯一の意図は、パンチくんに新しいテディベアをプレゼントし、寄り添う相棒を与えることだった」と釈明。さらに市川市動植物園に対し、サルの飼育環境の改善などのために100万円を寄付したいとの意向も示しました。

「善意」の主張に「売名」「炎上商法」と批判の声

無断でサル山に侵入したことで、同園は安全確認や一部エリアの閉鎖、警備強化、イベントの中止といった対応を迫られました。

日曜日で家族連れもにぎわう園内で起きた出来事だけに、SNS上では「サルたちがどれだけ怖い思いをしたか」「動物は自己顕示欲のための道具ではない」といった怒りの声が相次いでいます。また、職員が単独で侵入者を制止していたことについても、「もし刃物を隠し持っていたらと思うと恐ろしい」と、その危険性を指摘する声が上がっています。

動物のケアを本来の業務とする飼育員に不審者の制圧を強いる状況そのものを問題視する意見も少なくありません。「Memecoin」を名乗るアカウントの声明は「善意」をにじませる内容でしたが、サルへの加害がなかったとする説明はあくまで関係者側の主張にとどまり、動物が受けたストレスや設備への影響は園や警察の確認を待つ必要があります。むしろ、騒動を起こしたメンバーをたたえるような文面や、宣伝活動と一体化した一連の動きが「反省ではなく炎上込みのバズ狙い」「売名行為ではないか」と受け止められ、批判をさらに強める結果となっています。