登録者335万人の米YouTuber、16歳少女の死亡事故を「でっちあげ」と主張 名誉毀損で28億円の賠償評決を受ける

アメリカのYouTuber「Ryan Upchurch」(ライアン・アップチャーチ/登録者数335万人)が、16歳の少女の失踪事件に関する動画をめぐって起こされた名誉毀損訴訟で、1750万ドル(約27.8億円)の賠償評決を受けたことがわかりました。さらに翌日、懲罰的損害賠償として50万ドル(約8000万円)の追加支払いも命じられています。

16歳の少女が失踪した事件

訴訟の発端となったのは、2022年8月にカリフォルニア州で起きた少女の失踪事件です。当時16歳のKiely Rodni(キーリー・ロドニ)さんは、タホ国立森林公園近くのキャンプ場で行われたパーティに参加した後、行方不明となりました。

大規模な捜索活動が展開されるなか、家族はクラウンドファンディングプラットフォームの「GoFundMe」で支援を呼びかけ、7日間で6万3000ドル(現在のレートで約1000万円)の寄付を集めました。

しかし失踪から2週間ほど後、ロドニさんは近くの湖の水底に沈んでいた自身のSUV車内で遺体として発見されました。当局の調査では事故による溺死と結論づけられ、他殺を示す証拠はなかったとされています。

Placer County Sheriff’s Office

事件を「でっちあげ」と主張

アップチャーチは、ロドニさんの遺体が発見された後、「ZERO proof of Kiely Rodni situation being REAL」(意訳:キーリー・ロドニ事件が本当だという証拠はゼロ)と題した動画をYouTubeに投稿しました(現在は削除)。

その中でアップチャーチは次のように語っていました。

“ネット上の死”を使って人をだますなりすまし行為をすれば、GoFundMeで億万長者になれるって気づいてるか? めちゃくちゃ早くできる。キーリー・ロドニのGoFundMeを見てみろ。過去7日間で6万3000ドル集まってる。キーリー・ロドニのGoFundMe1つでだ。死を偽装する人物1人につきGoFundMeを5件作れば、必要なのは3人だけだ。3人。3つのバズった話。それで2週間で億万長者だ

さらに「これは偽物だ。キーリー・ロドニが本物という証拠を見せてみろ」とも発言し、遺族を名指しする形で詐欺疑惑を視聴者に向けて訴えていました。

YouTube

遺族がナッシュビルの連邦裁判所に提訴

ロドニさんの父親と祖父は2023年、ナッシュビルの連邦裁判所にアップチャーチを名誉毀損で提訴しました。

遺族の弁護団は、動画が深い悲しみのさなかにある家族について虚偽の主張を広め、遺族の社会的評判を傷つけ、精神的苦痛を与えたと主張しました。また、動画の拡散がアップチャーチの数百万人の視聴者に届いたことで、遺族への組織的な嫌がらせや脅迫が激化したとも訴えています。

アップチャーチ側はこれに対し、動画は演出的な誇張表現や激しい議論スタイルを含むものであり、視聴者もそれを報道ではなく個人の意見として受け取れるはずだと主張。アメリカ合衆国憲法修正第1条(言論の自由)による保護を訴えて棄却を求めましたが、裁判所はこれを退けました。

アメリカの名誉毀損訴訟では、政治家や著名人などの「公人」が訴える場合、発言者が虚偽だと知っていた、または真偽を無視して発信したことを示す必要があります。今回、裁判所は遺族を「私人」と判断しており、遺族側に求められる立証のハードルはそれより低いものとなっていました。

陪審員が名誉毀損を認定、約28億円の評決

2026年5月18日、ナッシュビルの連邦陪審は、アップチャーチの動画をめぐる名誉毀損などの訴えについて遺族側の主張を認め、1750万ドルの賠償評決を下しました。翌日にはさらに懲罰的損害賠償50万ドルが加算され、アップチャーチが支払うべき総額は1800万ドル(約28.7億円)に達しています。

評決を受け、アップチャーチ側の弁護士は声明で、言論の自由は自由社会に不可欠な権利だと強調した上で、アップチャーチ氏は遺族に心からの同情を表していると説明。遺族が敬意をもって扱われ、悲しみを受け止めるための時間と平穏が与えられるべきだと述べました。

評決については「現時点でコメントはない」としています。今後、アップチャーチ側は控訴する可能性もあります。