登録者25万人VTuber、高知県室戸市のPR動画制作で契約トラブルを報告 制作会社から一方的に終了通告、公文書開示請求へ
VTuberの「アズマリム」(登録者数25万人)が、高知県室戸市のPR動画制作をめぐり、元請けの制作会社との間で深刻な契約トラブルが発生していたことを明らかにしました。
案件の概要
アズマリムは2018年にデビューしたVTuberで、ファンを「センパイ」と呼ぶ親しみやすいスタイルで人気を集めてきました。過去には運営会社との権利問題で活動休止を余儀なくされた経験もありますが、2020年に個人勢として活動を再開。現在はバイク好きのバーチャルモトブロガーとして、動画の企画・撮影・編集をほぼ1人でこなしています。
3月19日、アズマリムは「地方行政案件を引き受けたら大変な目にあった話」と題する生配信を実施しました。
配信によると、事の発端は2025年12月頃。ある制作会社の代表から、室戸市のPR動画制作への参加を打診するメールが届きました。案件は「令和7年度室戸市PR動画作成業務」で、室戸市が公募型プロポーザル方式で募集していたものです。
室戸市の公式サイトで公開されている募集要項・仕様書によると、本業務の提案上限額は308万円(税込)。業務内容は、室戸市の絶景スポットや絶品グルメ、魅力的な宿などを巡り、ツーリング好きの方に旅の目的地として室戸を選んでもらえるようなPR動画を作成するというものです。仕様書には「インフルエンサーを起用した動画を制作・配信することで効果的なプロモーションを図る」と明記されており、インフルエンサーの起用が企画の前提となっていました。
起用するインフルエンサーの条件として「総フォロワー数5万人以上のツーリングが主体のインフルエンサー」「エンゲージメント率1%以上」が求められており、動画は合計40分以上(20分程度の本編1本+複数の短編動画)、1泊2日のツーリング旅で、動画の投稿先は「インフルエンサーのSNSアカウント」と規定されていました。
撮影現場での混乱
アズマリムは制作会社と打ち合わせを重ね、室戸市とバイクツーリングを組み合わせたオリジナル衣装の制作や、現地訪問者向けのステッカー配布企画などのアイデアを提案。チャンネルの視聴データや、過去に視聴者が聖地巡礼した際の反応なども資料としてまとめ、プロポーザルの企画提案書に盛り込みました。2026年1月、制作会社から「おかげ様で本企画が通過になりました」との連絡があり、撮影準備が本格化します。
ところが、2月に高知県室戸市での撮影に臨むと、状況は事前の説明と大きく異なっていました。制作会社が手配するとしていたプロのカメラマンが現場に来ておらず、スタッフも1名のみ。代表本人も不在で、アズマリムは手持ちのiPhoneで撮影せざるを得ない状況に追い込まれました。さらに、レンタルバイクの予約もされておらず、急遽アズマリム自身のクレジットカードで立て替えることになったといいます。撮影は仕様書の規定通り1泊2日で朝から晩まで行われましたが、時間が大幅に押したほか、撮影できない場所も発生。帰りの交通チケットも取り直しになるなど、混乱が続きました。なお、撮影現場には室戸市の職員も同席しており、アズマリムは挨拶を交わしたと述べています。
契約書をめぐるやり取り
撮影後、アズマリムは制作会社に対して正式な契約書の締結を求めました。「修正回数や作業範囲が明確でなく、委託されている具体的な範囲も不明確」であること、また自身のチャンネルで公開する以上、権利関係を曖昧にできないことがその理由です。
しかし制作会社からは契約書ではなく発注書を送付するとの回答があったとのこと。アズマリムは弁護士に相談のうえ、委託条件を書面で明示することは法令で定められているとして契約書の作成を要請しました。
制作会社側は「弊社の弁護士に相談して作ります」と応じたものの、実際に送られてきた契約書のドラフトは、それまでの協議内容が「白紙にされたに等しい状況」だったといいます。「制作途中のものも含めて全部渡す」「何かあったら全部アズマリムの責任」といった内容が記載されており、制作物の明確な指示がないのもかかわらず、「大幅な修正可能性」という条件もあったそうです。
アズマリムが自身に求められているものが何なのか改めて尋ねたところ、制作会社側から「条件はロケ地の網羅です」という要求が初めて提示されました。しかし、カメラマン不在やスタッフ不足で撮影できなかった場所もある中、何をもって「網羅」とするのかの定義も示されず、誰がどのような指示を出しているのかも不明確だったといいます。アズマリムは制作会社と室戸市の間の契約書の開示を要求しましたが、開示不可との回答でした。また、室戸市の担当者と制作会社を交えた3者でのウェブ面談は対応可能との返答があったものの、当日になってドタキャンになったそうです。
一方的な終了通告
事態が決定的に動いたのは3月12日。制作会社の弁護士から「ご提示いただいた条件での制作継続は困難と判断いたしましたので、恐縮ながら、◯◯様との委託契約は締結せず、この案件は終了とさせていただきます。この点は室戸市も交えて協議を行った結果です」というメールが届きました。
アズマリムは「お願いしてた協議はどうなった?」「これって民間の話なのに室戸市も交えて協議ってどこからどこまでが市の判断なの? もう何もわかんないんだけど」と困惑しながら説明します。
制作会社側からは、ここまでの作業に対する対価として、15万円と立て替え分の実費負担を提示されたとのこと。アズマリムは「企画をやって編集をやってさ、(中略)撮影もやってさ、15万円ってどういうこと?」と苦笑い。当初提示されていた金額には到底及ばないとしたうえで、法的根拠も示されていないと指摘します。
また相手側からはアズマリムが映っていない素材を使って納品するという方針も伝えられたといい、アズマリムは、インフルエンサー起用を前提とした仕様との整合性への疑問も口にしました。
室戸市の対応
アズマリムの弁護士が室戸市の担当者に直接連絡を取ったところ、担当者は「詳細をメールしてください」と応じました。弁護士は時系列を整理し、再委託に関する問題点や仕様書違反の疑いなどを含む詳細なメールを送付。仕様書の留意事項には「受託者は、本業務の大部分を第三者に委託し、又は請け負わせてはならない。ただし、受注者が書面によりあらかじめ承諾したときは、その限りではない」と明記されており、再委託には市の書面による事前承諾が必要とされています。アズマリムへの再委託についてこの手続きが適正に行われていたのかも問い合わせ内容の一つでした。
しかし、3月17日に届いた室戸市観光ジオパーク推進課からの回答は「今回の質疑についてこちらからは回答する義務が無いので控えさせていただきます」だけでした。弁護士が改めて上司を含めた回答を求めたところ、担当者は「3月17日中に判断して電話します」と答えたものの、配信時点(3月19日)まで返答はなかったといいます。
配信の趣旨と注意喚起
配信の中でアズマリムは、今回の報告の趣旨について「誰かを攻撃したいとか告発したいということではない」と強調。現地で撮影に協力してくれた室戸市の人々への説明責任と、公金が関わる案件であることからの説明責任の2点を理由に挙げました。「現地の方がすごい出迎えてくれたり、すごい盛り上げてくれたり、めっちゃ頑張って撮ってくださった」と感謝を述べつつ、「その方々にはこんなことになって、協力してくださったのに本当にどう説明したらいいんだろう」と述べる場面もありました。
また、同様のトラブルへの注意喚起として「行政だからちゃんとやってくれるんじゃないかと思いながらやってもさ、結局、再委託先だから関係ありませんって言われておしまいみたいなことがあるかもしれないから、みんな気をつけてね」と呼びかけました。
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