マンガワン公式YouTube「ウラ漫」、密着動画をすべて非公開に 性加害事件めぐる不祥事で

小学館の漫画アプリ「マンガワン」編集部が運営するYouTubeチャンネル「ウラ漫 ー漫画の裏側密着ー」(登録者数約15万人)が、2月27日までに編集者の出演する動画をほぼすべて非公開としました。ユーチュラ調べでは、公開されていた365本のうち321本が非公開となり、残されたのはコミックスの宣伝PVなどごく一部のみで、チャンネルの看板コンテンツだった密着ドキュメンタリーは一切視聴できない状態となっています。

「ウラ漫」とは

ウラ漫は、2017年に運営が始まったマンガワンの公式YouTubeチャンネルです。当初は漫画のPV投稿が中心でしたが、2024年に「ウラ漫」へとリニューアルし、大きく方針を転換しました。

リニューアル後は、マンガワン編集部の編集者や漫画家の1日に密着するドキュメンタリー形式の動画を主軸に据え、打ち合わせの様子や創作論、編集者の仕事のリアルを克明に映し出すスタイルが大きな反響を呼びました。

制作は「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」「THE ROLAND SHOW」などの密着ドキュメンタリーを手がけてきたSync Creative Managementが担当。2025年1月にはチャンネル登録者数10万人を突破し、漫画業界の裏側を見せるYouTubeチャンネルとして異例の成功を収めていました。

なぜ全動画が非公開になったのか

動画が非公開となった直接の原因は、ウラ漫に出演していた編集者の一人が、深刻な不祥事に関与していたことが明らかになったためです。

Sync Creative Managementの代表・行澤風人氏は、27日にX上で「以下お詫びとご報告」として次のように説明しました。

編集部全体を撮影するドキュメンタリーという映像の性質上、被害に遭われた方の心情を最優先に考え、ウラ漫として制作した全ての動画を非公開とさせていただきました

行澤氏は

該当事件や作品・作者情報について知らずに制作業務を行なっていたとはいえ、本チャンネルの存在が被害に遭われた方を苦しめていたことを、重く受け止めております。深くお詫び申し上げます

と謝罪し、「動画が再公開される予定はない」とも明言しています。

背景にある性加害事件の全容

事の発端は、2026年2月20日に札幌地裁で下された民事裁判の判決です。

漫画『堕天作戦』の作者・山本章一氏は、北海道の私立高校(通信制)で非常勤のデッサン講師を務めていた2016年頃から約3年間にわたり、当時15歳の教え子に対して繰り返し性的暴行を加えていたことが裁判で認定されました。裁判所は「教師と生徒という圧倒的優位関係を悪用し、判断能力の未熟さに便乗して性的要求に応じさせた」と厳しく断罪。被害者は重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)と解離性同一性障害を発症し、大学を中退、現在も長期治療中とされています。

山本氏は2020年2月に児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けていました。そして今回の民事裁判では、1100万円の損害賠償が命じられています。

山本氏の逮捕を受け、マンガワン編集部は『堕天作戦』の連載を中止しましたが、当時の公式発表では理由を「私的なトラブル」とだけ説明していました。そして2022年12月、山本氏は「一路一(いちろ はじめ)」という別名義で、同じマンガワンの新連載『常人仮面』(作画:鶴吉繪理)の原作者として再び起用されました。

性加害で罰金刑を受けた人物を、名前を変えて同じ編集部で再起用していた――。この事実は、2月25日頃からSNS上で裁判資料が拡散されたことをきっかけに広く知られることとなりました。

担当編集者の関与

さらに深刻な問題として浮上したのが、マンガワン編集部の担当編集者・成田卓哉氏の関与です。

東京新聞や共同通信などの報道によると、成田氏は2021年5月、被害女性・山本氏・編集者を含むLINEグループに参加し、和解条件として以下の内容を提案していました。

  • 山本氏が示談金150万円を支払う
  • 被害女性が連載再開の中止要求を撤回する
  • 性加害について口外禁止とする
  • 公正証書を作成して上記を確定させる

被害女性は「連載を再開するなら、休載理由が逮捕だったことを公表してほしい」と求めましたが、山本氏側がこれを拒否。交渉は決裂し、2022年7月の民事訴訟提起へとつながりました。

この成田氏こそが、ウラ漫の動画に多数出演していた編集者でした。

YouTube

 

マンガワン編集部の声明と対応

マンガワン編集部の声明と対応

マンガワン編集部は2月27日、アプリ内で声明を発表しました。主な内容は以下の通りです。

  • 『常人仮面』の原作者「一路一」が山本章一氏と同一人物であることを認める
  • 『常人仮面』の配信停止・単行本の出荷を停止
  • 「原作者の起用判断および確認体制に問題があった」「本来であれば原作者として起用すべきではなかった」と謝罪
  • 編集者の示談交渉参加について「組織として関与する意図はなかった」としつつ、「事案の重大性に対する認識が十分でなく、不適切な対応だった」と認める

一方で、担当編集者の処分や編集長・上層部の責任には一切触れられておらず、謝罪文がアプリ内限定の掲載にとどまっていることにも批判の声が上がっています。なお、小学館本体からの公式声明は27日時点で出されていません。

連載作家・業界関係者からの反応

今回の件を受け、マンガワンで連載中の作家や小学館関連の漫画家から、厳しい声が相次いでいます。

漫画家の洋介犬氏は、小学館と出版契約中の作品について「契約解除の検討を開始する」とXで表明。同時に「小学館と仕事中の無関係な作家を非難しないでほしい」とも呼びかけました。マンガワンで連載経験のある伊勢ともか氏は「担当作家への大きな裏切り」「強い失望」と述べ、編集部の責任ある対応と体制改善、被害者への適切なケアを強く求めています。『常人仮面』の作画を担当していた鶴吉繪理氏は、山本氏の正体を知らなかったと説明した上で、被害者の回復を願う声明を発表しました。

また、Sync Creative Management所属の映像ディレクターで、「THE ROLAND SHOW」(登録者141万人)や「進撃のノア」(同100万人)などの密着ドキュメンタリーで知られる「ソンD」は、行澤氏の投稿を引用する形でXを更新。

密着マンとして
メディア倫理観を反していたことに
当chに関わっていたうちほ全スタッフ
とても心苦しい状況です

もう密着仕事から卒業したいと相談にきた者もいる

そのくらい感情を込めて向き合ってきて
流石にこれは無さすぎる(原文ママ)

と心境を綴っています。