YouTuberにも「パブリシティ権」はある? 物申す系動画への削除申立てが多発【弁護士が解説】

最近、いわゆる“物申す系YouTuber”の動画に対して、「パブリシティ権」「肖像権」「著作権」「プライバシー権」などの侵害を理由に削除申立てが相次いでいるようです。
(関連記事「ビジネス系YouTuberが『著作権侵害』で動画の削除申請を連発? 警告受けるYouTuberが続出

動画を制作するにあたって、第三者の氏名や顔写真、作品などを拝借することもあるかと思いますが、法律の考え方をしっかり勉強しておかないと、アカウントがBANされたり、裁判に発展してしまう可能性があるので、注意が必要です。

YouTube動画

パブリシティ権とは

まず、そもそも「パブリシティ権」とは何か、ということですが、簡単に説明すると“自分の氏名や容姿などに関する経済的価値を、無断で第三者に利用させない権利”だと思ってください。

芸能人やスポーツ選手などのネームバリューに関する権利、といったほうがわかりやすいでしょうか。有名人であるからこそ、その人の顧客吸引力に着目して、テレビCMに起用したり書籍が売れたりするのです。
本来であれば、本人などに許可を取ることが必要ですが、これを無断でやってしまうとパブリシティ権の侵害になる可能性があるということです。
隠し撮りした有名人の写真を、本人に無断で写真集にまとめて販売したりする場合などがこれに該当します。

ちなみに、パブリシティ権を侵害してしまった場合は、慰謝料支払いなどの民事責任は発生しますが、刑罰などの刑事責任を負うわけではありません。
(著作権侵害などを理由とする刑罰を受ける場合はあります。)

パブリシティ権の侵害となる判断基準

もっとも、超大物有名人の氏名や顔写真を無断で利用したとしても、必ずパブリシティ権の侵害になるというわけではありません。
過去の裁判例では、パブリシティ権の侵害になる具体的ケースとして

① 顔写真などそれ自体が鑑賞の対象となる商品として無断使用する場合(グラビア写真など)
② 商品の差別化を図る目的で顔写真などを商品に無断使用する場合(タレントグッズなど)
③ 顔写真などを商品の広告として無断使用する場合(テレビCMなど)

を挙げていました。

つまり、有名人の経済的価値につけこんで、“悪質なあやかり方”をしてしまう行為をしてしまうと、許容範囲の限度を超えて、パブリシティ権の侵害になってしまうということになるかと思います。
許容範囲の限度を超えているかどうかは、氏名などを使用する目的、使用方法・態様を総合的かつ客観的に判断していくことになります。

過去の裁判例では、有名サッカー選手の半生が描かれた書籍を本人に無断で出版されたことが問題になりましたが、氏名や顔写真が使用されているのは書籍全体のうちほんの一部にすぎない点などを理由として、有名サッカー選手の経済的価値を利用する程度はそこまで大きくない(=許容範囲内である)として、パブリシティ権の侵害を認めませんでした。
(※もっとも、プライバシー権の侵害はあるとして損害賠償請求が認められました。)

YouTubeではどうなのか

あくまで個人的見解にすぎませんが、YouTube動画で有名人の氏名や顔写真を無断使用したとしても、その動画の目的や内容、顔写真などの使用方法(大きさや表示秒数、アレンジの有無など)に細心の注意を払えば、パブリシティ権の侵害にはならないと思います。
たとえば、登録者の少ないYouTuberが、有名YouTuberやインフルエンサー、タレントをターゲットして動画にすることがありますが、ネームバリューに便乗して “悪質なあやかり方”をしているような内容のモノは、注意が必要です。

YouTube運営側は、ガイドラインに違反する動画がないか、AIによるチェックと人為的なチェックをしていると思いますが、パブリシティ権という難しい法律の概念を完全に理解している前提でチェックをしているわけではないと思います。
プライバシー権や肖像権、著作権を侵害している動画であるにもかかわらず、パブリシティ権の侵害を理由として動画を削除されたり、アカウントBANされたりする可能性だってあります。
それくらい、他の権利との境界線が曖昧なんですね。

ここ最近、削除申立てが認められる事例が続いた理由は、数字を追うことばかり考えて過激な内容の動画を投稿するYouTuberが急増している現状に危機感を覚えたYouTube運営側が、より一層厳格な姿勢で動画内容をチェックし、健全なプラットフォームにすべく眼を光らせているからだと思います。

ですので、YouTube動画を制作する上で注意したいのは、“もし自分の動画を視聴したら対象者本人が不快な気持ちになるだろうか”という視点を持っておくことが大切だと思います。
たとえば、有名人のスキャンダルやトラブルに対して意見する動画であったとしても、言葉遣いに気を付けたり、中立的立場の姿勢も見せたりするなど、相応の配慮を心掛けるべきだと考えます。

ぜひ、いわゆる“物申す系YouTuber”のみなさんには、配慮が欠落した動画を継続的に発信しないよう、注意していただければと思います。