映画のあらすじをまとめた“ファスト映画”、法的な問題は?【弁護士が解説】
最近、“ファスト映画”というものがYouTubeで話題となっています。
映画の映像のうち一部を切り貼りし、ストーリーの内容を字幕解説するなどして、10分前後に編集された映像を制作してYouTubeにアップロードしたものです。
ツイッターでは、ファスト映画を「漫画村の映画版」と批判したツイートが大きな注目を集めました。
このファスト映画、法律上の問題はないのでしょうか。
映画批評のネタバレが厳しくなる一方、youtubeでは人気映画の市販DVD映像を違法にブッコ抜いて編集し「こういうストーリーで、こう展開し、最後はこう」と、どんでん返しから決めゼリフまで5~10分で説明する「ファスト映画」ジャンルが人気で、何十万人も登録者がいる。要は漫画村の映画版ですよね…
— CDB (@C4Dbeginner) November 21, 2020
許可をもらっていなければ犯罪
映画作品には著作権があり、その映像を切り貼りして編集する行為や、その編集映像をネット上にアップロードする行為は、映画制作会社の著作権(翻案権・公衆送信権)を侵害していることになるので、絶対にやってはいけない行為です。
―著作権法上「引用」にとどまるのであれば許されるようですが(著作権法32条)、ファスト映画は「引用」には該当しないのでしょうか。
適切な「引用」といえるための判断基準のひとつとして挙げられるのが、“あくまでサブ的役割として、他人の著作物を拝借していること”なんです。たとえば、YouTubeで映画の批評をする場合、メインである自分の批評をわかりやすくするために、従属的に映画の画像・映像を少し利用するのであれば、適切な「引用」といえると思います。ところが私が確認する限り、ファスト映画は、凝縮した映像やストーリーそのものが動画のメインコンテンツとなっています。この場合、映画の映像をサブ的役割として利用していると評価するのは難しいので、「引用」とはいい難く、著作権侵害になると思います。ちなみに、海外では「フェアユース」(適切な目的・手法であれば他人の著作物を広く利用できること)という考えがありますが、現在の日本の法律ではこの規定がありません。
もっとも、私の考えでは、ファスト映画はこの「フェアユース」にすら該当ぜず違法と考えています。
(参考:YouTubeヘルプ「YouTubeでのフェアユース」)
10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方
―海外在住のYouTuberが日本向けに発信している場合や、日本に住んでいるYouTuberが英語で発信している場合にも、著作権の適用があるのでしょうか。
また、著作物が日本のものであれば、加害者が外国人でも適用されます。したがって、海外在住の日本人YouTuberが外国作品のファスト映画を制作したり、日本在住の外国人YouTuberが日本作品のファスト映画を制作したりして、YouTubeにアップロードするのは、著作権侵害になります。
―この場合、刑罰はどの程度になるのでしょうか
―では反対に、ファスト映画を視聴する側は罪には問われないのでしょうか。
YouTubeでの視聴など、いわゆるストリーミング再生の場合には、違法にはならないと考えられています。
他方、ファスト映画のデータを自分のパソコンやスマホなどにダウンロードして視聴する場合には、著作権侵害になってしまいます。
著作権者が黙認している可能性もあるが・・・
―現在、YouTubeにはファスト映画に特化したチャンネルが存在しますが、アカウント削除されていない理由としてはどのようなことが考えられますか。
もうひとつは、ファスト映画の存在を知りつつも、あえて黙認している場合です。視聴者の中には、ファスト映画を見たことをきっかけに、映画館に足を運んだりDVDを購入したりする人が一定数いると思います。
映画制作会社としては、著作権侵害の申立てをしたり、加害者を特定して損害賠償請求をするという面倒なアクションを起こすよりも、あえて放置して作品を宣伝してもらったほうがメリットが多いケースもあるはずです。そういった理由で、違法なファスト映画に対して著作権侵害を主張していないのかもしれません。
もちろん、前述のように無許可でのファスト映画のアップロードは犯罪行為ですので、今後チャンネルのアカウントが削除されたり、刑事責任を追及されてしまう可能性もあるので、専門家の観点からは、やめておいたほうがいいかと思います。

弁護士 北川貴啓
慶應義塾大学法学部卒、明治大学法科大学院卒、神奈川県弁護士会(川崎支部)所属
■メディア実績
日本テレビ「実は私こういう者でして…」、フジテレビ「バイキング」、テレビ朝日「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」、TBS「ゴゴスマ」ほか多数








